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Exploring the World of Kabuki: 'KOHEI KYOMORI -naimaze〜Resonating Words in Changing Times〜' at MATSUYA GINZA
2023.03.16
ART NEWS
京森康平『-naimaze〜共振する時代のコトバ〜』
現代装飾家・京森康平による、日本の伝統的な舞台芸術の歌舞伎をモチーフにした展覧会『KOHEI KYOMORI -naimaze〜共振する時代のコトバ〜』が、銀座松竹スクエアのエントランスホールにて、2023年3月19日まで開催されている。
開幕初日の3月14日には、京森康平、キュレーター・奥岡新蔵、松竹衣裳株式会社の代表取締役社長・海老沢孝裕による、トークイベントが開催。京森の創作テーマである装飾を皮切りに、アートの歴史、歌舞伎と装飾、今展のメインテーマなど、今展に深く関わるトークが活発に交わされた。
現代装飾家・京森康平の装飾の世界
京森康平は古今東西のあらゆる造形物に見られる装飾を現代の視点から再解釈し、平面作品に引用することによって独自の視覚言語の構築を目指すアーティスト。陶芸や建築、衣服や印章等における装飾の役割や性質へ徹底したリサーチをかけ、それらの調査結果を手工芸的な考え方に根ざした制作技法によって作品に昇華している。
煌びやかな装飾と明瞭な色彩という、京森作品の特徴は装飾が有する密度感と高度な手技によって成り立っている。コンセプトや言葉での説明を前提とする現代アートの傾向に対して、京森は見て一瞬で分かるアートに、一貫して比重を置いている。
対談では「私自身、引くことより足していくことに喜びを見出しています。その中で装飾がもつ密度感や手技の力といった魅力を制作に落とし込んでいる」と装飾の魅力と制作への原動力を語る場面もあった。
トークイベントの様子
歌舞伎の衣装にみる装飾と象徴
今回の展示では京森の作品とともに、歌舞伎の衣装と小物が展示。歌舞伎の演目の中でも歴史の深い『義経千本桜』を含む2着が、作品とともに展示されることで、両者の繋がりが一層明確になっている。
例えば、京森が浮世絵プロジェクトのために制作した《UN men No.2》の男性の面には、日本の伝統である飾り紐が取り入れられている。同作品の人物は軍服らしき衣装を身につけており、その服に勲章がいくつもついていることから、男性も威厳の高さがうかがえる。
展示風景より、京森康平《UN men No.2》
一方で『義経千本桜』にて源義経役が着用する衣装(画像左側)は、「小忌衣(おみごろも)」と呼ばれる歌舞伎独特の衣装を着用している。これは着用者の身分の高さを視覚的に表現した衣装であり、さらに小忌衣を留める飾り結びは一度結ぶと簡単には解くことができない工夫がされているところに、着用者の言葉の絶対性が象徴されている。
長い歴史の中で衣装や小物1つとってみても、物語を深く推考させる意味が込められている歌舞伎。古今東西の装飾の歴史と意味を平面作品で再定義しようとする京森作品との親和性が感じられる。
柄がかすんだように見える「かすみ刺繍」を施した歌舞伎衣装。京森作品の背景を想起させる。
京森と歌舞伎が作り出す、言葉を必要としない視覚芸術
今展タイトル『-naimaze〜共振する時代のコトバ〜』に使用されている「nalmaze」(ないまぜ)という言葉は、複数の演目の表菜を続り交せなから開本を作成する歌舞伎のテクニック名であり、古今東西の装飾文化をサンプリングしながら視覚芸術の可能性を探り続ける京森を読み解くキーワードになっている。
今展キュレーターを務めた奥岡新蔵は「京森さんには、パッと見ただけで人々が “Wow” と言ってしまうような作品を作りたい、という一貫した制作理念がある。言葉は人同士を近づけもするが、隔たりを生むものでもある。特に(多様性を重視する)この時代に、アート作品や歌舞伎を見るなど、視覚表現を通じてのコミュニケーションがあっても良いのではと思い、共振という言葉をサブテーマにしました」と、キュレーションへの想いを語った。
異なる文化や思想を持つ人々が共存し多様性を謳う現代。コミュニケーションの方法と質が求められる時代において、アートと歌舞伎がもたらす、新たな視覚交流をぜひご高覧ください。
【開催概要】
『KOHEI KYOMORI -naimaze〜共振する時代のコトバ〜』
会期:2023年3月14日(火)~19月(日)
時間:10:00 ~ 18:00
会場:銀座松竹スクエア1階エントランスホール
住所:東京都中央区築地1-13-1
HP:https://thearthouse.jp/
キュレーター:奥岡新蔵
WHITESTONEでは今展にて展示されている《UN men No.2》をオリジナルとした浮世絵を販売しております。
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