Art Jakarta 2023

ジャカルタ・アート・シーンの注目ビッグイベント、Art Jakartaが2023年11月17日から19日の期間で開催された。コロナ禍を克服し、歴史あるケマヨラン地区に広がるジャカルタ国際エキスポでの開催は、独自のエネルギーを湧き上がらせた。同アートフェアにホワイトストーンギャラリーも参加。現地に赴いたギャラリストによるフェアレポートをお届けする。

Whitestone Gallery's booth at Art Jakarta 2023

Art Moment と並びジャカルタ・アート・シーンのビックイヴェントであるArt Jakartaは、今回で第2回目。コロナ禍以降最大の規模での開催、そのスポンサー企業の多さからも主催者の並々ならぬ熱が伝わってくる。開催地はビジネス街として再開発されたケマヨラン地区にあるジャカルタ国際エキスポ（JIEXPO）。歴史あるショッピングモールやソフィリア美術館、少々北へ足を延ばせばビーチが広がる文化エリアだ。

Art Jakarta 2023

週末3日間に集約された開催にもかかわらず、Art Jakarta 2023の総来場者数は35,000人以上。昨年と比べて15,000人の増加となった。インドネシア各地から気鋭のギャラリーが集結したほか、マレーシアやシンガポールなどの近隣国、日本・韓国・台湾・オーストラリアなどから68のギャラリーが出展。ローカルの熱気とインターナショナルの洗練が混ざりあい、良い意味で玉石混交の刺激がある。参加ギャラリーによる通常の「ギャラリー・セクション」のほか、入口付近に小型ブースが林立、ジャカルタを中心に表現活動をおこなうアーティストやデザイナーのための発信スポットとした「アート・シーン・セクション」も個性的だ。

From Whitestone Gallery's booth at Art Jakarta 2023, Kongkee’s artwork.

Whitestone gallery は会場のほぼ中央、四辻にブースを構え、来場者は必ず通るという絶好のロケーション。６つの外壁にはそれぞれ、谷村メイチンロマーナ、Kongkee、京森康平、坪田昌之、Soonik Kwon、ミズテツオを配置。とりわけKongkeeによる極彩色のLEDインスタレーションは誰もが目を奪われる。文字通りアートフェア全体のひとつの目玉であった。具体を世界に紹介し、拠点を各地に拡げているWhitestone gallery らしい地域色と「マテリアル」にこだわったセレクションは様々なタイプの来廊者を魅了した。

Whitestone Gallery's booth at Art Jakarta 2023

From Whitestone Gallery's booth at Art Jakarta 2023, Osamu Watanabe’s artwork.

作品の前で撮影する来場者は老若男女後を絶たず、通路に踊りだすように配置した渡辺おさむの鹿の立体は待ち合わせスポット化していた。現地の目利きの関心をとりわけ捉えたのが、Soonik Kwon。「完全抽象は売りにくい」という固定概念を覆す、凛とした美意識と入念さが生み出す堂々たる佇まいで、インドネシアでも高い売約率を記録した。「マーケットが読み切れない」という理由から、多種多様な作家のヴァラエティに富む作品を展示したことが訪問者の「楽しさ」に刺さり、功を奏したといえる。

From Whitestone Gallery's booth at Art Jakarta 2023, Soonik Kwon’s artwork.

今後もインドネシアのアート熱がうねるような拡大を見せることは、そのプレゼンテーションの層の厚さからも確信できる。テキスタイルを始めとした伝統工芸の豊かさは、やはり「マテリアル」への新しいこだわりが生まれる宝庫であるし、ダイナミックな自然環境はテクノロジーの発展との掛け合わせの妙をもたらし続けるだろう。「アーティスト開拓」という観点からも、探究の余地が大いにある土地である。

Whitestone Gallery's booth at Art Jakarta