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アート・セントラル香港&アート・バーゼル香港2025: アジアのアート最前線を歩く
2025.04.16
ART FAIR

今年で10回目を迎えるアートセントラル2025は、セントラル・ハーバーフロント香港で3月26日から30日までの5日間開催された。100を超えるギャラリーと500人以上の次世代を担うアーティストや世界的に有名なアーティストが参加し、数多くのコレクターやアートバイヤーが才能を発掘する場となった。
アートセントラル香港2025の盛り上がりを、同時期に開催されているアートバーゼル香港2025の様子と共にお届けする。
アート・セントラル香港2025:注目ポイント

ホワイトストーンギャラリーのスペース
ホワイトストーンギャラリーは、展示ホールのエントランスを入って左に位置する存在感のある空間で来場者を迎えた。特に小松美羽やSoonik Kwon、猪熊克芳の作品は、コレクターの大きな関心を集め、人気を博した。
他にも、塩沢かれん、Aruta Soup、three、ロナルド・ベンチューラなどの、多国籍な作家たちの作品も注目を集めた。

屋外に展示されているフィリップ・コルバートの作品
その中でも、フィリップ・コルバートは、アート・セントラルの展示だけではなく、文化的商業施設であるK11 MUSEAや、屋外の香港のビクトリアハーバー沿いにも展示され、沢山のゲストが写真に収めていた。

靉嘔のホワイトストーンギャラリーのブースで特集展示
今回から新設されたイベントであり、過去と現在を繋げる取り組みとしての「レジェンド」企画も多くのゲストの心を引きつけた。この企画はキュレーターのイーノック・チェン氏が手掛けており、1970年以前に生まれた6人の先駆的なアーティストの作品にフォーカスされている。6人のアーティストはアジア太平洋地域のコンテンポラリーアートの発展に大きな影響を与えており、チェン氏は「当時は革新的な存在であり、その影響力は計り知れない」と述べる。この展示を通じて、香港が現代アートだけでなくアート史における重要なリンクであることを示している。
靉嘔は、レジェンド企画の出展作家として選出された。ホワイトストーンギャラリーのブースだけではなく、アートセントラル全体でも大々的に取り上げられ、ゲストの注目を集めていた。

Emily Kam Kngwarrayの作品
フェアの中でもひときわ目立つ存在感で、多くのゲストの注目を集めていたアーティスト、Emily Kam Kngwarrayを紹介する。オーストラリアのノーザンテリトリー出身で、アンマティエール族の一員である彼女は、自然、精神、土地との関係にインスパイアされた作品を制作している。彼女の作品には、植物やヤムイモの種子をモチーフにしたものが多く(名前の一部である「Kam」はヤムイモという意味)、鮮やかな色彩や点描技法を使って動きやパターンを表現している。芸術活動において、家族、先祖、土地との結びつきを大切にし、自国を守る手段として捉えており、国際的にも高く評価されている。

ホワイトストーンギャラリーのスペース
他にもアートセントラルでは様々なイベントが行われており、盛り上がりを見せていた。
ナイトセントラル(night artcentral)は毎年変わるイベントの1つで、今年は一般公開の後の時間である3月26日の17:00-21:00に開催された。ギャラリー展示だけでなく、アルコールなどがふるまわれたり、音楽を楽しめたりなど、来場者の活気溢れる空間となった。
ネオセクター(Neo cector)は設立1〜2年の新しいギャラリーに焦点を当て、新たな才能の支援と、コレクターや美術機関の架け橋となる役割を果たすプロジェクト。多様なストーリーが1つのアートシーンとして融合しており、ディレクターのコリー・アンドリュー・バー氏は、アート・セントラルが新しいアーティストにとって重要な発表の場であるべきだと述べている。
アートバーゼル香港2025:ハイライト

アートバーゼル香港2025の様子
アートバーゼル香港は42の国と地域から242のギャラリーが参加するアートフェア。今年は、インド、オーストラリア、南アフリカなど23のギャラリーが新たに出展した。主に3つの部門が中心となっている。
ギャラリーズ部門には、欧米やアジア太平洋地域の新進気鋭のギャラリーからトップのギャラリーなどが参加。注目ギャラリーとして、ロッシ&ロッシ(香港)、ロンキニ・ギャラリー(ロンドン)、日本からはANOMALY、カイカイキキギャラリーなども参加した。
ディスカバリーズ部門では、様々な新進アーティストの個展が紹介された。
インサイト部門では、アジア太平洋地域のアーティストやアジアの写真史に焦点を当てた展示が行われた。参加ギャラリーとして、フラワーズ・ギャラリー(香港・ロンドン)、亞紀画廊(台北)、Takuro Someya Contemporary Art(東京)などが注目された。
アートバーゼルはアートセントラルの約5倍ほどの広さがあり、2フロアに渡って展示されていた。ギャラリー数も多く、欧米やアメリカなど世界中のギャラリーが参加し、インターナショナルな雰囲気だった。

リクリット・ティラヴァニジャとフィリップ・パレーノの作品展示風景
特に目を引いたのが、リクリット・ティラヴァニによる「ASIANS MUST EAT RICE」という挑発的なテキストと、フィリップ・パレーノの宙に浮く魚のインスタレーションだった。
今回のアートバーゼル香港では、一週間にわたり会場内外で展開されるパブリックプログラムが開催された。その中の注目は、ホー・ツーニェンの新作「Night Charades」で、M+のファサードでも3ヶ月間毎晩上映された。香港映画のアイコンとなるシーンをアニメーションでリメイクした作品は、AIによる映像の再構成とアルゴリズムを用いたリアルタイムの編集プロセスによって制作され、香港映画史を新しい側面から探求しており、沢山の人々が足を止めていた。
芸術的な熱狂が渦巻いていた香港で、ホワイトストーンギャラリーもまた、靉嘔をはじめとする作家たちの魅力を伝えていた。
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