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この世界をすべて遊び場に|フロレンティン・ホフマン個展『MORE Yellow』

フロレンティン・ホフマン『MORE Yellow』ホワイトストーンギャラリー銀座新館

観る人に驚きと喜びをもたらすオランダ人アーティスト、フロレンティン・ホフマンの個展『MORE Yellow』が、ホワイトストーンギャラリー銀座新館で開催されている。香港で10年ぶりに開催された「ラバー・ダック」プロジェクトの最中にスタートした今展。土曜日のレセプションでは、子ども向けのワークショップを開催し、ホフマンの創造性と斬新なアイデアの源がワークショップを通して感じられたイベントとなった。

Hofman's Artwork »

日常に突如現れるアートへの扉

展示風景

フロレンティン・ホフマンは、大規模な公共施設や彫刻で知られるオランダの現代アーティスト。現代パブリックアートの分野で大きな活躍をみせており、中でも「ラバー・ダック」と呼ばれる作品で広く知られている。お風呂のおもちゃと言えば、誰もが思い浮かべるゴム製の黄色いアヒル。ホフマンは日常に溶け込んだこのおもちゃを極大化させて海に浮かべた。ホフマンは日常で使用する物体のサイズを変えることで人々を非日常の世界に誘い、世界を眺めるための新たな視点を提供した。

2007年にはじめて行われた「ラバー・ダック」プロジェクトは、香港、アメリカ、カナダ、韓国、など世界を巡る冒険をつづけ、昨年2022年には大阪・中之島を訪れた。また今年2023年には、10年ぶりに香港で「ラバー・ダック」プロジェクトを実施。おなじみの黄色いラバーダックが瓜二つのダックとともに、香港の街を大いに賑やかにした。

2023年開催の香港での「ラバー・ダック」プロジェクト、Photo courtesy of AllRightsReserved

"ダブルダックス" と名付けられた香港でのプロジェクトは、ホフマンにとって日本での初個展となる『MORE Yellow』のテーマに繋がっている。ギャラリー中央には3匹のラバーダックがその愛くるしい姿で鎮座。作品の要となるイエローカラーでスペース全体を誰にとっても親しみやすい空間に変える。

子どもの自由な想像力で世界を変える

ワークショップの様子

香港でダブルダックスプロジェクトに参加する傍ら、展覧会の準備で来日したホフマン。滞在中の6月17日(土)には子ども向けのワークショップを開催した。粘土やミニチュアのフィギュアを使い、作品のスケールや鑑賞者とのサイズの対比について、子どもたちが考える絶好の機会となった。

ワークショップの様子

ワークショップはおもちゃと好きな色の粘土を使って制作する、という簡単な説明で始まった。子どもたちが思い思いに作品を制作するのを眺めながら、出来上がった作品の周囲に人型フィギュアを置くことで、自身が行ってきたプロジェクトの擬似体験を子どもたちに提供していた。作家は思い思いの作品を作り上げる子どもたちに寄り添うように制作を見守りつつ、時に一緒に制作したり作品へのアドバイスをしたり、制作に夢中になっている子どもには作品を作り上げることの素晴らしさを語る場面もあった。

ワークショップに参加していた少女をモデルにホフマンが制作した粘土作品。

Hofman's Artwork »

世界にもっと色彩を:MORE Yellow

フロレンティン・ホフマン《Snubnosed Monkey Study 1+2+3》2017, 28.5 × 28.5 cm, Panel, Paper, Color Pencil.

日本での初個展となる『MORE Yellow』について、ホフマンは幸福や遊び心、友情を連想させる黄色という色の意味を強調している。今展では、ホフマンの長年にわたる様々な大作を陶器で再構築した作品や、線描画からインスピレーションを得たスチール製の「ライン」シリーズを展示。また、普段は日の目を見ないドローイングやスケッチも公開している。

ギャラリースペースは、象徴的で機知に富んだ彫刻の動物たちによる生き生きとした展示で活気づいている。アーティストが好きな色であり、彼の代表作の象徴でもある "黄色" にインスパイアされた色彩の遊び心は、補色の相互作用によってさらに強調され、刻々と変化する感情を反映するダイナミックな体験を生み出している。例えば、動物を描いたミニマルな線の作品では、形とその本質と美しさを探求している。ホフマンは絶滅の危機に瀕した動物を意図的に題材に選び、自然の謙虚な力を強調するために、実物大よりもはるかに大きな形を作り出した。単純化することで純化される美的体験を追求するために、作家は特定の要素を強調し、そして孤立させることでその要素を強化しているのである。

今展について作家は「以前に香港や台北で作品を発表したときは、展覧会のタイトルを『Play Around the World』としました。これは私の制作目的に近いテーマです。今回は思う存分に遊んで、驚いて、そして自分の中に眠る子どもを見つけてほしいという思いで、『MORE Yellow』と名付けました。正座したり、床に寝転がったりして、いつもとは違う視点から世界を見るように楽しんで欲しい」と語った。こう語った作家自身も、インタビューやワークショップ中も、作家自身が展示や制作を無邪気に楽しんでいた。

フロレンティン・ホフマン

ホフマンは、色彩と形状が元来持つ魅力を通して、日常の枠を超えた異なる視点から世界を見つめ直すことを促している。だからこそ彼の作品は、子どもから大人まで、あらゆる世代の人々にインスピレーションを与えることができる。フロレンティン・ホフマンの個展『MORE Yellow』は2023年7月15日まで開催。

展示風景

『MORE Yellow』展のオンラインエキシビションをオンラインサイト会員だけに限定公開中。この機会にぜひ、ホフマンの独創的な芸術表現をオンラインでもご堪能あれ。

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