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一瞬の美を永遠に捉える｜村松亮太郎『Fluffy 浮動之美』
2024.02.09
EXHIBITION
“Ryotaro Muramatsu: Fluffy” Whitestone Gallery Taipei
ゆらゆらと浮遊するくらげ、ふわふわと風に舞うたんぽぽの綿毛。五感に訴えかけ鑑賞者の心に波紋をもたらす村松亮太郎の個展『Fluffy 浮動之美』がホワイトストーンギャラリー台北で閉幕した。
1997年にクリエイティブカンパニーNAKED, INC.を設立して以来、あらゆるジャンルのプロジェクトを率いてきた村松だが、2018年からは個人アーティストとしての活動を開始。これまでに国内外で作品を発表し、今展で初めて台北での個展開催を果たした。
“Ryotaro Muramatsu: Fluffy” Whitestone Gallery Taipei
台北での初となる展覧会『Fluffy』はインタラクティブな要素を含む多彩な表現手法を駆使し、観客を魅了した。例えば「DANDELION PROJECT」の一環として制作《MINI DANDELION》は、金箔やプラチナ箔が日本の職人によって丁寧に貼りつけられたアートピース。
村松が2020年から手掛けている「DANDELION PROJECT」は大きなタンポポのオブジェに息を吹きかけると、別の場所に植樹（設置）されているタンポポに綿毛が飛んでいき、そこで花を咲かせるというアートプロジェクトで、《MINI DANDELION》は同プロジェクトのたんぽぽの綿毛をかたどって制作されており、様々な形の種子はさまざまな価値観が共存するダイバーシティが表現されている。
《MINI DANDELION（Gold）》2023, 40.0x40.0x40.0cm, UV硬化レジン・ピアノ線・金箔
《CHILL》2023, 191.2×108.8cm, 和紙・木材・プロジェクションマッピング・音響システム
展覧会では “繊細に変化し続け、ひとつの状態に留まることのない存在のあり様” をコンセプトに制作されたインタラクティブな作品5点も展示されている。
レセプション当日は村松自身も在廊し、作品のコンセプトや制作のこだわりを観客に説明する場面も見られた。村松の作品は、季節や自然の移り変わりをテーマにしたものが多く、例えば季節によってさまざまな表情をみせる桜や、水に揺られてたゆたうくらげ、陸と海を行き交う波打ち際など、時間の移ろいのなかで自然がみせる一瞬の美が提示されている。
今展で特に注目すべきなのはインタラクティブな作品群だろう。アナログとデジタルが融合した作品は、新たな表現形式を示している。波打ち際の様子を幻想的に彩った《HAZAMA -A Space Between-》は、一見すると投影作品のように思われるが、実は砂を吹きつけたオブジェである。投影された映像と砂のオブジェが相互に作用することで、海と陸の曖昧な境界線が波のようにゆらゆらと現れる。
《HAZAMA -A Space Between-》2022, 70.0x125.0cm, プロジェクションマッピング、測域センサー、 音響システム
《Kaleido Jellyfish》2019, 400×200cm, プロジェクションマッピング、音響システム
日の当たる水の中をくらげが優雅に泳ぐ《Kaleido Jellyfish》は見る時によってくらげの柄が異なる様相を見せる。ゆらゆらとたゆたうくらげのモザイク柄は、作家自身が撮影した写真から生成されてる。作家のパーソナルな記憶や視点から生まれた作品だからこそ、観客に深い魅力を与える。
“Ryotaro Muramatsu: Fluffy” Whitestone Gallery Taipei
テクノロジーが急激に発達した現代。アートの世界も例外ではなく、先人たちが継承してきた伝統的手法に加えて、技術的発展を作品に取り入れる傾向はこれからますます強まっていくことだろう。
刻々と変化していく世界とどうやって繋がれるか、目にも留まらぬ速さで過ぎ去っていく時間の中でいかに自らの癒しを見出すか。変化と永遠という二項対立を感じさせる展覧会となった。
また、村松亮太郎率いるNAKEDの花の体験型アート展『NAKED FLOWERS 花之舞光影展』は、台北の国立台湾科学教育館にて2024年3月10日（日）まで開催されている。
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