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松谷武判の国内初となる大規模展覧会が開催

2024.10.22
ARTIST NEWS

パリ、バスティーユのアトリエにて制作中の松谷武判、2019 Photo: Michel Lunardelli

「具体美術協会」の第2世代として登場した後、拠点をパリに移し、現在も積極的に活動する松谷武判(1937-)。ビニール系接着剤を用いたレリーフ状の作品をはじめ、版画、紙と鉛筆まで一つの表現にこだわらず、60年を超える活動で様々な表現を試み、今も走り続けています。松谷の国内初となる200点以上の規模の大回顧展が、東京オペラシティ アートギャラリーで開催されます。

Takesada-Matsutani

《二つの形》 2022 作家蔵 Courtesy the artist and Hauser & Wirth ©Takesada Matsutani Photo: Benoît Fougeirol


新素材から生み出される官能

松谷武判は、60年を越える活動を通して、物質が示す表情や肌理、存在感と生命の波動、流動を交錯させる優れた制作を続けてきました。1960年代前半、当時の新素材であるビニール系接着剤(ボンド)を使って有機的フォルムを生み出すレリーフ状の作品で具体美術協会の第2世代の俊英として名を馳せます。

「抽象的」であることを標榜した具体美術協会にあって、抽象的でありながら官能的な暗示や連想を誘う松谷の作風は、きわめてユニークな存在でした。官能性や生命性、時間や運動、目には見えない「力」を、フォルムと物質の両面から語りかけるような表現として成立させることが、松谷の出発点でした。

Takesada-Matsutani

左 松谷武判《作品 63-A-36》1963 姫路市立美術館蔵
右 松谷武判《作品 66-2》1966 宮城県美術館蔵

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具体のリーダー吉原治良(右)とともに、グタイピナコテカ(大阪)での個展にて、1963 ©︎松谷武判アーカイブス


版画への領域ー空間と時間の探求からハードエッジへ

Takesada-Matsutani

上 松谷武判《繁殖-ピンク》1970 芦屋市立美術博物館蔵
下 スタンリー・ウィリアム・ヘイターとともに、パリ、「アトリエ17」にて、1967 ©︎松谷武判アーカイブス

1966年に渡仏した松谷。パリを拠点に、当時現代アートの最前線であった版画の領域で新たな取り組みを開始します。世界中の作家たちが集うスタンリー・ウィリアム・ヘイターの版画工房「アトリエ 17」 に入門、やがて助手をつとめるように。

平面メディアにおける空間性と時間性の探求から、 やがて表現は幾何学的であると同時に有機的なフォルムと鮮烈な色彩を特徴とするハードエッジの表現に移行します。


「黒」を重ねた新境地

1970年代後半からは紙と鉛筆という身近な素材を用いて制作行為の始原へと溯行し、黒のストロークで画面を塗り込めて生命的な時間を胚胎させる表現を確立しました。ビニール系接着剤による有機的な造形にも改めて取り組み、そこに鉛筆の黒を重ねた作品で新境地を拓きます。作品は建築を取り込んだインスタレーションの形をとることも多くなり、同時にパフォーマンスでも独自の個性を発揮します。

Takesada-Matsutani

左 《雫》1985 東京オペラシティ アートギャラリー蔵 Photo: 斉藤新
右 《接点2009》2009 神奈川県立近代美術館蔵

Takesada-Matsutani

上 《流れ-6》1982  東京都現代美術館蔵 *1983年、ベルギーでの展示風景 ©︎松谷武判アーカイブス
下 パリのアトリエで制作中の松谷武判、1981 ©︎松谷武判アーカイブス


拡張する表現レンジ

現在もパリを拠点に旺盛な制作を続ける松谷は、2017年のヴェネチア・ビエンナーレ、2019年のパリ、ポンピドゥー・センターでの回顧展など、改めて国際的な評価を高めています。

近年はひとつの手法や表現にとらわれることなく、その制作はますます自由で大らか、大胆にして密やかな繊細さをたたえて進行しています。さまざまな物質が示す表情に生身の身体と五感で対峙することで生み出される松谷武判の作品、その豊かな多様性は、見るものに語りかけてやみません。

Takesada-Matsutani

左 《Soft and Hard 9-11-2010》2010 作家蔵 Courtesy the artist and Hauser & Wirth ©Takesada Matsutani Photo: Marc Domage
右 《丸い丘》2023 作家蔵 Courtesy the artist and Hauser & Wirth ©Takesada Matsutani Photo: Nicolas Brasseur


知られざる深奥まで

これまで未公開だったスケッチブックやドローイングなども積極的に紹介します。制作の背後に分け入り、松谷の時期ごとの関心や、多様な表現を根底から支える一貫した関心のありかを、浮かび上がらせます。

Takesada-Matsutani

左 《無題》1973 作家蔵 Courtesy the artist and Hauser & Wirth ©Takesada Matsutani Photo: Nicolas Brasseur
右 《無題(モニュメントのための構想図)》1985 作家蔵 Courtesy the artist and Hauser & Wirth ©Takesada Matsutani Photo: Nicolas Brasseur

現在も積極的に作品を制作し、インスタレーションなども行っている松谷。60年以上の軌跡を振り返ることが出来る貴重な機会をお見逃しなく。


展覧会情報

展覧会名:松谷武判 Takesada Matsutani
会期:2024年10月3日(木)- 12月17日(火)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1, 2, 3)
開館時間:11:00 - 19:00(入場は 18:30 まで)
休館日:月曜日(祝休日の場合は翌火曜日)
入 場 料:一般 1600(1400)円/大・高生 1000(800)円/中学生以下無料
*( )内は各種割引料金 *障害者手帳等をお持ちの方および付添 1 名は無料 *割引の併用および入場料の払い戻しはできません

主 催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団
協 賛:日本生命保険相互会社
協 力:相互物産株式会社、ハウザー&ワース
出品協力:芦屋市立美術博物館

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