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金丸悠児の樹花鳥獣と東京のビル街が融合したアートホテル

2022.04.04
ART NEWS

画面を自由に往来する動物や、不可思議な生物、御伽話に出てくるような建物たち。金丸悠児の作品は、見知らぬ場所でありながらも、そこはかとない郷愁を感じさせる世界観が魅力だ。パークホテル東京で実施中のプロジェクト「アーティスト・イン・ホテル」では、金丸によるアーティストルーム制作が進行している。

「アーティスト・イン・ホテル」とは

「アーティスト・イン・ホテル」は、アーティストが実際にホテルに滞在しながら作品を作り上げるという、パークホテル東京で実施されているプロジェクト。パークホテル東京は「日本の美意識が体感できる時空間」というコンセプトのもと、ホテル全体でアートを意識した空間づくりを進めている。

従来の客室を改装する「アーティストルーム」と、ホテル施設の壁や天井に描く「ウォールアート」の2通りのプロジェクトがあるなか、現在金丸は部屋全体をアートで彩るアーティストルームに取り組んでいる。

金丸悠児が描く「樹街鳥獣図」

今回金丸が手掛けるのは、ビルがひしめき立つ東京を眼下に望むホテルの34階。金丸が制作する「アーティストルーム」では、江戸時代の画家・伊藤若冲の作品「樹花鳥獣図」へのオマージュを込めた、オリジナル樹花鳥獣たちが描かれている。

制作途中ではあるが、それぞれの壁を彩る動物や生き物たちに思わず目を奪われる。部屋に入るとすぐに、ゾウやキリン、ライオン、トラなど、動物界のスター達が出迎えてくれる。さらに、眠れない時の数え歌に欠かせない羊や、夢を食べる“獏”と同じ呼び名のバクなどが、ベットが置かれる予定の壁に寄り添うように描かれている。

高層タワーが乱立する東京のコンクリートジャングルから、森羅万象の生き物が闊歩する幻想的な密林へ。「樹街鳥獣図」(じゅかいちょうじゅうず)と題されたこの絵は、若冲の「樹花鳥獣図」に登場する生き物たちと客室から展望できる東京の「街」が作品の中で融合している。

右側壁に伊藤若冲の作品「樹花鳥獣図」へのオマージュ絵が、左側壁には羊が見える。

時間をかけて作られるアートの部屋

「アーティストルーム」はホテルでの滞在をアートとともに過ごせる貴重な体験だが、ホテルの一室をアートで彩るこのプロジェクトの完成には時間が必要となる。

思い描いた絵を実現させるために、まず最初に部屋の壁全体に下地を塗る。金丸の場合は自身のキャンバス作品と同じように、多数の色を織り交ぜるように壁に色を重ねる。その後、愛くるしい生物たちが次々に壁に描かれていく。

制作風景

作家アトリエにて。手前2枚のキャンバスが下地塗りを終えたもの。

金丸の作品は1つのキャンバスの中に、別の動物や生物、建物がパッチワークのように繋ぎ描かれる。金丸が「小さなキャンバス」と呼ぶ部分は、どこに出現するか、何が出現するか、金丸本人にも分からないという。ふとした瞬間に思い出が蘇るように、偶発的にその存在を決めるという。

壁に描かれたリクガメの上に、カメレオンやオウムガイ、アルマジロが出現。

麻布や英字紙など、金丸が普段から用いている素材がホテル室内でも使用されている。

アーティストルームは2023年に完成予定

2021年3月に制作がスタートしたアーティストルームは2023年中に完成予定。同ホテルの31階は、既に全客室がアーティストルームに改装されていることもあり、「アーティストルームの室数が増えるにつれて、アーティストたちの想像力が発揮されています。最初は壁だけに書かれていた絵が、壁だけでなく天井や浴室、果ては家具の中にまで、作家が手を加えている部屋もあります。僕も負けないぐらい楽しい部屋にしたいと思っています」と、金丸もこのプロジェクトへの意気込みを見せる。

東京のビル街と樹花鳥獣たちが共存するノスタルジックなアーティストルームの完成にご期待ください。

Photo by Park Hotel Tokyo and Whitestone Gallery.

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