INTERVIEW
ホワイトストーン ギャラリー北京は、塩沢かれんの中国本土での初個展「Masquerade of Light」を開催いたします。 本展覧会では、私たちの想像力を無限に広げる彼女の最新作の数々を展示。作家が創り出す壮大な舞台の中で、夢と現実が交錯する情景を描き出します。オンライン展示では、塩沢かれんの作品の数々をご覧いただけるだけでなく、アーティスト自身の視点やインスピレーションに触れることができます。鮮やかな色彩が光り舞い踊る仮面舞踏会をご堪能くださいませ。
2023.08.26 - 09.16
人生は仮面舞踏会だ。
華やかな瞬間に仮面をかぶり、夢の終わりを告げる鐘の音とともに仮面を外す。 そしてまた別の仮面を手に、世界を旅し続ける。
喜び、希望、悲しみ、情熱......仮面の下で幻想と踊る姿は、「人生」という名のオペラだ。
ー 塩沢かれん
塩沢かれんは、東京造形大学大学院修士課程を修了したばかりの新進気鋭のアーティスト。オランダで過ごした幼少期の体験が作品に色濃く反映されており、独特の空間遠近感や光と影のコントラストが特徴的な作家である。視覚以外の感覚を通して知覚される世界を描くため、音や光を通して五感に働きかける表現要素を探求している。 風車、古典的なアーチ、教会の尖塔など、ヨーロッパの建築要素が彼女の作品には登場する。彼女は明暗法の技法を用い、光と影のコントラストを際立たせつつ、鮮やかな色彩を調和させている。塩沢の作品は、色彩豊かな筆触とともに美しい色合いを重ね、その後、想像力に基づいた輪郭を描き、同時に絵の具を引っかくために針を使用するという、厳格で繊細なスタイルで制作されている。すべての繊細な工程を経て最終的にタッピング技法を用いて柔らかな光の効果を生み出すことで、夢幻的でありながらもリアルな情景が観客の前に現れる。
本展は、作品を通して「イマジネーションの喜び」を発見してほしいという作家の願いが込められている。舞台のカーテンの向こうに潜む日常の美しさを見つめる塩沢の行為は、果てしなく続く世界という舞台のスポットライトの下で、小さくも美しい一瞬の記憶を切り取るようだ。 彼女の作品には、それぞれの仮面の下に隠された観客の心に深く響く旋律が宿っているようだ。
ホワイトストーン ギャラリー北京は、塩沢かれんの中国本土での初個展「Masquerade of Light」を開催いたします。 本展覧会では、私たちの想像力を無限に広げる彼女の最新作の数々を展示。作家が創り出す壮大な舞台の中で、夢と現実が交錯する情景を描き出します。オンライン展示では、塩沢かれんの作品の数々をご覧いただけるだけでなく、アーティスト自身の視点やインスピレーションに触れることができます。鮮やかな色彩が光り舞い踊る仮面舞踏会をご堪能くださいませ。
この展覧会には、作品を通して『想像する喜び』を発見して欲しいという願いが込められています。人は日々の生活の中でその内なる心に仮面を被っており、懐かしい景色や記憶を隠しているのではないかと考えております。作品を鑑賞していただく中で普段眠っている仮面の下の景色や記憶にスポットライトが辺り、輝き踊り始める。その光景はまるで仮面舞踏会のように光り輝くということを想像しました。
それら一連のモチーフは、私の懐かしい記憶に大きく帰還しているものです。 私の作品は自伝的な側面もあるのかもしれません。すべての作品の根底にあるものは、子供時代を過ごした思い出です。 遠く懐かしい日々の不思議な感覚は、心の奥底に眠っている普遍的なものではないでしょうか。
小さな体で経験したオランダでの体験は、広大な土地や教会の高窓からの柔らかい光、西洋絵画独特の陰影や遠近法などを私にもたらしました。私がもし今もオランダに住み続けていたら、これらの体験が自身の中でこれほど大きな影響を与えていたかどうかは分かりません。異国での幼少期の体験、記憶に深く根差したものであるからこそ、普遍的な光景になっているように思えます。日本に住んでいて自身が日本人であるからこそ自分のアイディンティティについて深く考え、それぞれの文化の違いに気づき、人の普遍的な感情に興味をもちました。
最初にアクリル素材で下地を制作するのですが、その際にまだ形になっていない朧げな空間、色彩、空気感についてイメージを膨らませます。そしてしばらく作品を寝かせ、クリアな視界で新たに作品に向き合い樹脂絵の具をさらに重ねていきます。そうして出来上がった下地を一度油彩ですべて塗り潰します。記憶の景色に蓋をするようなイメージですね。そこから少しずつ、暗闇に光を灯すように油彩層を削っていく事で、より鮮やかな色彩が強調され、印象深くなっていくのだと思います。これらの方法は独自で開発したものですが、単に油彩のみで筆で描くと作品に近くなりすぎて思うように筆が進まないことがありました。今の方法は、ノートにドローイングをするかのように描けることも、作品にのびのびとした印象を与えているのかもしれません。
最初にラフなエスキースは描きますが、私は基本的に制作前にあまり綿密な作品計画は立てないタイプです。そのときの気温や湿度によっても絵の具の状態が変化し、作品の顔つきが変わるので、ある程度は自身の経験に基づいてコントロールもできますが、その時その時の一瞬の表情に身を任せることも多いです。最初に思い描いていたイメージと実際の作品の状態との間を行き来してベストな表現を常に探っています。
<先述したような自身のアイディンティについて深く考え出したのは高校生の頃からでした。ただ表現したいことがあるのになかなかキャンバスに筆で描くだけでは難しいことに大学で気付きました。ある時、幼稚園生くらいの子供がクレヨンで画用紙を塗りつぶしてそこから引っ掻いて絵を描いている光景を見たときに、なんて自由でのびのびと描いているのだろうと思ったことと、とても色が鮮やかで綺麗だと思ったのです。色を重ねていくことで濁っていくのではなく、削り出すことで澄んで見えました。そこからは実験の連続で、今の制作スタイルは大学在学時にある程度確立はしましたが、今も日々進化していると思います。
私にとって絵を描くことはとても自然な行為で、スタジオは自宅と兼用なのですがあえてそうしている部分があります。部屋ではいつも色々な国のドラマが様々な言語で流れていて、作品が完成間近になってくるとひたすら音楽を聴きながら制作することも多いです。 元々海外ドラマを見たり本を読んだりすることが好きなのですが、制作中は本を読むことはできないので、耳から聞く情報はとても刺激になります。静かな場所で制作するより、賑やかな空間の方が落ち着くのと、色々な情報が混在している方がたまにふとしたアイディアが降りてくるのでスタジオではアウトプットとインプットが常に行われているような状態ですね。
Whitestone Gallery Beijingのギャラリー空間は細く長く続く廊下を抜けると会場が現れるところに特徴があると思うのですが、この空間は私の今回のテーマをイメージする上でとても印象的な空間でした。暗闇を抜けると光が現れるような光景は、今回の展覧会の構成にも大きく影響しています。 また、北京には今回初めて訪れるのですが、個展のお話が決まる以前から中国の建築や装飾文化に興味がありました。古来から日常と芸術の美、そして自然が密接に関わりをもち、特に色鮮やかな色彩や繊細な彫刻、刺繍が日常の暮らしの中に根差している光景は今回の展覧会のテーマにも影響を与えました。
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