ー鹿のあたまから生えた植物に花が咲き、風景が出現するまでー

初めは一本の線でした。ペンのつまずき、こけた筆、滴るしずく、紙面のにじみ、それらを拒まず偶発的な現象を生かし、受容することで「像・かたち」は生成します。

線の痕跡は蝶や風景、木や川や鉱石の模様などにもみえ、それらが連なり構成要素となり、あらたな「像」や物語が紡ぎ出されます。未知の「像」は伏線が絡みあった交差場面のように象徴的な意味合いを持ち、そこにミクロ的かつマクロ的視野のスケール自在の重層的な世界が見えることがあるのです。

彼らと遭遇することは楽しく、まるで制御し難い生命体をみるようです。「血管」にみられるフラクタル構造の分岐的線による形態は、「枝」「川」「葉脈」「羽」「根」「角」とも通じ、私にとっていわば「生命のかたち」と言えます。

絵画の中で鹿の角は、水を運ぶ植物の茎に転じ、葉脈となり風景となっていきます。言葉遊びや回文は「かみ」という音から、紙、神、髪、上、守、噛みなど様々なイメージを思 い浮かべる事で成り立っています。

「あ!」は驚き、「ああ」は認知と需要、「あめ」となると飴、雨、天を想います。五十音の一音一音、さらにそれらの組み合わせでさらなるイメージが生まれます。
その言葉一つ一つに新たな精が宿るように、絵画は一つ一つの像、その組み合わせや関係性で成り立ち、それぞれが命を宿しているように感じるのです。

「草木ことごとく能くものをいう」というアニミズムの世界観です。
そして私も、視覚による線と形態の連鎖遊びをしているのかもしれません。

そうやって蝶が蝶となるように、鳥が鳥となるように、絵画は自ずから成るのです。

Karuizawa Gallery

長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1151-5
Tel: +81 (0)267 46 8691
Fax: +81 (0)267 46 8692
10:00 - 17:00 (10月 - 6月),10:00 - 18:00 (7月 - 9月)
Closed: 月曜
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