中村馨章:音の境界線

Taipei

2024.07.13 - 08.24

中村は聴覚障害者として、聴覚と視覚の境界を探求し、コミュニケーションの限界を問う作品を制作している。彼の作品はリレーショナル・アートの概念を取り入れ、視覚と言語の構造、色彩と肖像の変化を使って境界を表現している。また、観客の体験を作品に重ね合わせることで、コミュニケーションの「限界」を超える可能性を探求し、彼の人生経験から形成された「サイボーグ」の概念も作品に取り入れている。

幼少期から聴覚障害を持ち、微かな音と読唇術を用いてコミュニケーションを図ってきた中村にとって、音の概念はまず、想像され、それから言葉や実際のイメージと関連付けられる。この時間差が、音の世界と無音の世界、身体と認知、想像と現実、名前と物、経験と概念などの間のユニークなフィールドを形成する。これらの要素の交差、対立、浸食、相互作用の中で確立された境界が溶けていく。

本展では、聴覚と視覚の間の境界というテーマを探求するためにいくつかの戦略を用いている。例えば、音の世界と無音の世界の言語構造を描写するシーンを作成し、色彩や肖像の変化を認識のメタファーとして使用し、現代社会における視覚的および聴覚的側面に関連するアイデンティティの喪失を観察している。

月と言葉の海の間を飛ぶ蝶を描いた絵画作品では、聴覚と視覚の境界に根ざした対話の本質を伝えている。中村にとって、「対話」は絶えず変化する月や海のように不確かであり、蝶が月とその影の楕円形の影の間を浮かんでいるように見える。この世界観を通じて、中村は言葉と音の機能、および記号と音のつながりを探っている。

「Seeing the Sound」シリーズは、人工内耳手術後に拡張された聴覚の変化を反映している。このシリーズでは、人物の表情が周囲の音や振動に応じて変化し、音とイメージの密接な関係を因果的に示している。

さらに、中村の最近の作品では、音のイメージに触発された赤やピンクの色合いが主に使用されている。中村にとって、ピンクは純粋な音の表現であり、赤は彼の体と痛みの結果としての音の問題を指している。これらの色の強度の変動は、アーティストのサイボーグアイデンティティの流動性を象徴的に示している。境界を越える領域で、アーティストは現実の認識を継続し、変革する共感覚的な世界を創り出している。

「Sound Borders」は、聴覚と視覚の間の「境界」に対する中村の認識を明らかにするものである。境界はコミュニケーションの障害であるが、同時に重要な接点でもある。中村は聴覚と視覚が孤立したものではなく、密接に相互作用していると考えており、芸術的表現がこの相互作用を促進し、日常的に直面する「コミュニケーションの限界」を超える可能性を秘めていると信じている。

美術評論家・土方明司が語る、中村馨章の音の世界とコミュニケーションの可能性

ABOUT

中村馨章:音の境界線
2024.07.13 - 08.24

TAIPEI

1F, No.1, Jihu Rd., Neihu Dist., Taipei City, 114, Taiwan (R.O.C)
Tel: +886 2 8751 1185
Fax: +886 2 8751 1175
Opening Hours: 11:00 - 19:00
Closed: 日曜、月曜、祝祭日
More Info
お困りのことはございませんか?
作家・作品をより詳しく知りたい方はこちら

メールマガジンで最新情報を受け取る

最新のエキシビション情報や会員限定企画をお届けします。