あらゆる経験はやがて三次曲面として現前してくる

-MADARA MANJI

ホワイトストーン銀座新館ではこの度、MADARA MANJIによる個展『PRESSURE』を開催いたします。
MADARA MANJIといえば杢目金を用いたソリッドな立体作品を思い浮かべるが、今展ではその鋭角的なイメージに一石を投じるシリーズ『touch』が新たに加わる。『touch』は壁掛けスタイル。アルミ合金によって縁取りされた杢目金パーツは、金属らしからぬ膨らみと曲線で広大なユニヴァースを湛えている。

発端は 2024 年志賀高原ロマン美術館で開催された個展『Alive』に遡る。黒川紀章設計による自然との共生をテーマとしたこの美術館は、円錐形の吹き抜け構造で知られる。MADARAMANJI はこの構造を活用したインスタレーションを行い、完成した作品からは追認できない「制作プロセスに発生する音と光」を、可聴域を超えた無自覚の振動として再現。思えば人間の生のエネルギーの有りようとは、気づいたときにはすり抜けている類のものかもしれない。例えば、杢目金作品の制作において、高熱は色彩として、打撃の強度は造形として痕跡をとどめるが、音や光は消失してしまう。確かに存在していたそれらは、もはや触れることはできないものなのか。

『touch』とは、何かに「触れる」ことで拡張・変化していく人間の経験のプロセス、ひいては負のエネルギーの連鎖が生む不自由さや葛藤までも呑み込んだ、決して一筋縄ではいかない人生の不可思議な時間軸を現前させる試みである。今展では、前述の壁掛け作品とともに、従来の『Ambivalence』(セメントの塊と杢目金がボルトによって連結された、切り出しスタイルによるシリーズ)をオーヴァル型に変化させたもの、境界の消滅を最も色濃く象徴する水平線の映像をパラレルに併置、テーマである「三次曲面」に切り込む。

折々の感情や人生の変遷、艱難辛苦の先にある予期せぬ可能性を、展覧会タイトル『PRESSURE』は内包している。硬質なはずの金属の属性や、一見垂直で単調な「叩く」という行為はその実、思いもよらない振れ幅で波動している。

なお、長野県山之内町と小海町立美術館(安藤忠雄設計)は、MADARA MANJI の作品を恒久展示として収蔵した。美術館が過去の遺物の記憶を留め置く場所ではなく、大きな三次曲面を構成する点のひとつであることを暗に証明しているかのようだ。

今展が、経験の多様な交錯地点となることを期待しつつ、皆様のご来廊を心よりお待ち申し上げます。

Ginza New Gallery

東京都中央区銀座6-4-16
Tel: +81 (0)3 3574 6161
Fax: +81 (0)3 3574 9430
Opening Hours: 11:00 - 19:00
Closed: 日曜、月曜
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オープニング・レセプション

2025年5月2日(金) 17:00- ※作家在廊

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