WU SHUANG

光彩の連続性

2022.07.22

INTRODUCTION

大胆な色彩と贅沢な筆致で知られる抽象表現主義者であるウー・シャン。彼女の作品は、人間中心主義や自然をテーマとした視覚的な饗宴を表現しています。
しばしば、苦痛、憂鬱、自虐的な感情を含む作品タイトルからは、内なる精神的思考と自由の意味を見出そうとするウーの主観的な考え方が垣間見えます。

WU SHUANG

『光彩の連続性』

常に進化し続けるウー・シャンは抽象表現主義を追求、その鮮烈な色遣いと筆勢、シュールレアリスティックな世界観で観る者を魅了してきた。メディウムのひとつである発光顔料が色彩の強度を際立たせ、混沌としつつも絶妙な調和を見せるウー・シャンの色面構成。これまでも自然や環境とのかかわりにおける人間にフォーカスしてきたが、今展ではより自然環境や広範な「生そのもの」へと関心が移行。人間に起こる現象は肉体を超え、追憶や内省といった感情のうねりは豊かな光彩が波打つ時空と拮抗しながら統合されてゆく。ウー・シャンの絵画からはさまざまな時代のスタイルが断片的に喚起されるが、映し出されているのはあくまで現在の世相である。

“人生では確かに多くの夏があるが、2015年の夏ほどの酷暑はそうないだろう。その強烈さは、時空を超越しては止むことを知らぬ神の光の双曲線のようだ。それは光の波にとってある種の避難所ともなっている。色彩とダイナミックな筆勢に貫かれた色面全体は、あたかもコンサートホールにおける交響曲の多彩な響きのようだ。劇的なプロットは混濁した色調のなかに隠れ、豊かな色彩は歓喜あふれる雰囲気を醸し出す。底辺部に横たわる朝の光。そして、大地が2つの世界へと分かたれるのを私は見た。光の結晶は突如として消え失せ、共に神のパントマイムを舞ったのだ。”

- ウー・シャン

天体と大陸の寓話

(2021)

“時として、人生は魚のようだ。存在はしていても、近づいてくることはない。心のなかの隠された血液のように。閉じた瞳のように。その内側で輝く光のように。時の襞のなかへたくし込まれてしまった幾つかのシーンのように。圧倒された動物たちは「救助隊」へ群がる。星の下の黒雲のように、狡猾に密やかに、彼らは変転にさらされ、ミクロな世界でたゆたいながらも圧倒的な「解決」ともなる。これには理由も、道筋も、エネルギーの正当化もない。私の瞳のなかに色彩が現れて後もなお、それは反射のさまざまな形状に満ちている。”

- ウー・シャン

グローバルサンタ

(2022)

この「グローバルサンタ」は、筆勢や線といったメディウムの包括的な表現であり、制作途上に生じる偶発性は、絵画の意味を特定しない。自発性と確実性、偶然と必然との間にバランスを見つけることが、絵画を合理的な形態へと回帰させ、確固とした構築性を与え、その流動性を保ち続ける。これは私が理解するところの「グローバル化」でもある。「意味ある形態」を提示しながら、原初の形態的構造は徐々に解体されてゆく。

輝く月光

(2022)

“この作品は2022年の年明け、雪降る冬に制作した。冬空のなかで私たちをとりまく月の光の輝き。静かな夜。掻き集めた雪。雪の上に影をおとす月光に、人生の未知の行く末を重ねる。過去には、雪ふる深夜に共にゆっくりと散歩した。しかし、何事も永遠には続かない。真夜中に燦然とまたたく星も、月光そのものも。それでも全ての光は感ずるに値する。誰も知りえなかった真実の愛の旅を想い出そう。すべての人の心は白い月光のもとに隠されている。人であれ物であれ、心に留められたものはすべて。それぞれが固有の光とともに宝物として。なんと美しいことか。”

- ウー・シャン

蒼い霧

(2021)

この「蒼い霧」は線、形状、そして色彩が多層を成す作品であり、現実と夢、意識と無意識、立体と平面、抽象と具象といった一見相反する事象を結ぶ。作品の神秘や幻想、優美さを引きたてつつ、現実の人生のリアルな体験を照射する。それらが表現するのは人生の「表層」の模写ではなく、生に備わった「本質」である。物事の特徴を形づくるのは、生来の本質であり、それは枯渇することのない素材なのである。

ABOUT

WU SHUANG

1986年に重慶で生まれたウー・シャンは、抽象表現主義の若手アーティスト。 2007年にドイツのカッセル大学自由美術学校で学び、2009年に四川美術学院、その後修士課程で学習を続け、2014年に中央美術学院を卒業。 以来、彼女は北京でアーティストとして活動中。 ウーの作品は非常に興味深く、色の使い方、特に純度が高くコントラストの強い色を得意とし、一見対照的な数々の明るい色を混ぜ合わせているが、それらは調和している。 また、作品には誰もが共感できる深みと広がりのある感情が込められており、中国の女性アーティストにはあまり見られない特徴である。 一見、自由闊達に見える彼女の作品には、綿密な計算と合理性が反映されている。彼女の作品は冒険心を表し、世代を超えた人々を魅了し続けている。 そのユニークな作風から、メルセデス・ベンツやチャイナ・ファッション・ウィークなどの有名ブランドと3年連続でコラボレーションし、国内での展示会も盛んに行われている。

WU SHUANG: Lustrous Continuum
2022.7.22 - 8.27

Ginza New Gallery

東京都中央区銀座6-4-16
Tel: +81 (0)3 3574 6161
Fax: +81 (0)3 3574 9430
Opening Hours: 11:00 - 19:00
Closed: 日曜、月曜
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