チェン・インジー:塵

The Dust of a Long Journey

2022.03.25

INTRODUCTION

チェン・インジーは、中国の水墨画と西洋のグラフィティ・アートを融合させ、ダイナミックな構図でさまざまな感情を表現する力強い作家である。チェンの作品は、長年にわたる華やかな個性と熱意が感じられる一方で、あまり知られていない繊細で内省的な資質も持ち合わせている。抑制的でありながら同時に荒々しい現在の創作における探求期、そして彼の絵画における矛盾と調和の豊かなシンクロニシティ。多様な創作は、最後にはすべて、同じように具体的でありながら複雑な作家の心境に立ち戻るのです。結局、芸術の進化は現実と密接に関係している-これは、時代の変化に対する作家の人生経験における謙虚で鋭い反応なのである。展覧会では『Gravity』シリーズと『Shangri-La』プロジェクトで見られた哲学的思考と新たな絵画方法にフォーカスし、近年の創造的な文脈と発展を広範に展示する。

チェン・インジー

2021 Shangri-La 22 (2021), 80 x 200 cm

北緯50度の冷たい風が吹き、雷雲が立ち込め、暗闇に時折光がちらつく森の中で、大自然の壮大さと奇妙さに衝撃を受けた。巨大さとちっぽけさ、疾走感と静けさが相対するこの場所で、時間は無限に流れていき、塵の粒子ひとつひとつが目に映る。突然重力が無くなる感覚がやってきたかと思うと、それは野性的なエネルギーとなり、創造における無限の、循環する、空漠たるインスピレーションの中で衝突し、調和した。

- チェン・インジー(『Gravity』シリーズより)

GRAVITY

最新シリーズのひとつ『Gravity』は、中国風景画の伝統を活かして個性的なイメージを再現しながらも、最終的には固定観念を手放し、より抽象的で率直な表現になっている。山や川といった自然の超現実的な組み合わせであろうと、生物の細胞のように成長するブロックやカラーの使用であろうと、壊れやすくもバランスの取れた万物の生態系を作り上げるように。

SHANGRI-LA

雲南省シャングリラ地域で実施された『Gravity』シリーズの特別プロジェクトである『Shangri-La』では、写生と写意を組み合わせると同時に、モノクロカラーのシンプルさにフォーカスをあてて、線と気品を追求するという実験を試みた。これらの作品の中には山の中で即興で作られたものもあれば、スタジオで練り上げられたものもあり、さまざまなスケールの時間と空間の中で、表現者の内外に存在する柔軟な関係を投影している。

2021 Shangri-La 21 (2021), 70 x 150 cm

BREAKING

『Breaking』は、ストリートペインティングの手法を革新的に取り入れ、中国文化の古典的なドラゴンのイメージを再現したシリーズ。ボディ、ツール、キャンバスを超えた関係の中で、自身の存在を定義していく。

RECONSTRUCT UNIVERSE

『Reconstruct Universe』は、彼の故郷である佛山の嶺南文化と民俗伝統をモチーフに、個人の経験と社会的・歴史的記憶が相互に作用して生み出された作品だ。絵画と音楽のフュージョンを強調しつつ、作品のもつ一貫した「ライブ」と「パフォーマンス」の特性が際立っている。このシリーズは全て、激しい音楽とリズムの中で生み出された。

ABOUT

チェン・インジー

陳英杰(チェン・インジー)は、1991年に中国の広東省で生まれ、現在は佛山・順徳を拠点に創作活動を行う。イーゼル画、壁画、ライブパフォーマンスや、スペースインスタレーションのといった創作で、伝統的な中国の水墨画と西洋のストリートグラフィティアートの創造的な組み合わせを探求し、様々なメディアを通じて幅広い注目を集める。2020年にForbes中国の”世界を変える30歳未満の30人”に選出される。陳英傑の作品は、パリ、ロンドン、ブリュッセル、シカゴ、香港、台北、上海、北京、シンガポール等世界中の美術館で展示されており、ホノルル現代美術館や世界自然保護基金香港、シンガポールキャピタランドグループ等で保管されている。カルティエ、BMW、ルイヴィトン等多くの世界的ブランドからコラボレーションのオファーを受ける。 2022年にはVansとのコラボレーションで、新年寅年を祝うコレクションを発表した。

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