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JY × Meiji Hijikata|Exploring the Enriching World of Art Through Physics
2023.08.03
INTERVIEW

JY × 土方明司 対談の様子
川崎市岡本太郎美術館の土方明司館長がアーティストとの対話を通して作品に迫るシリーズ。第一弾は日本で統計物理学「浸透」を学び、「フラクタル」研究を制作に応用したアーティストの"JY"との対談を2回に分けてお届けする。
前半では“書と画”の関係や最新シリーズの「豹」について語られた。後半となる本記事では、統計物理学の研究をするなかでアートの世界に入ったきっかけ、そして物理学と美術の関係について対談が行われた。
物理学からアートの世界へ
JY個展『Carefree Excursion』2023, ホワイトストーンギャラリー台北
中国出身のJYは来日後「浸透」という統計物理学で博士号を取得した後に、東京芸術大学の絹谷幸二研究室にて芸術活動の研究を重ねた。また「フラクタル」、日本語で「自己相似性」と呼ばれる幾何学的構造の一種の研究を通じて、現代数学における東洋美術のメカニズムを解析。史上初めて東洋美術の数学基礎を築いた『中国画次元』を著作した。
土方:物理学の研究をするために来日されたなかで、美術に目覚めたきっかけは?
JY:液体が多孔質の中に入っていく「浸透」という統計物理学を研究していました。1990年に博士号を取得した後も千葉大学で研究を続けていました。時間に多少余裕ができたことと、幼い頃から芸術、特に水墨に親しんでいたので、自分の経験を利用してこれまでとは違う絵画表現ができないかなと、思ったんです。
土方:公に作品を展示したのは、1992年に埼玉県現代美術館で開催された「アジア・現代美術の旅」ですよね。
JY:そうです。埼玉県現代美術館に当時いらっしゃった学芸員の方が私の作品に興味を持ってくれたことがきっかけで、参加しました。この展覧会で物理的な研究の手法を絵画に応用した作品を展示したので、日本でのデビュー展と言えますかね。
土方:デビュー作品はどんな絵だったんですか?
JY:タイトルは《トーテム》です。科学分野の最先端を学びましたが、モチーフは中国に古くから伝わる儀式的な要素です。思い返せば今の作品に通じる部分もありますね。信仰の核となるような精神的な支え、一般的に神と言われる存在を現代の技術を駆使して、自分なりに表現しようとしていたのだと思います。
千葉県立美術館での展示の様子(2010年)
物理と美術ー偶然と必然
JY《57生生不息》2018, 200x200cm, media on canvas.
土方:物理学の研究をどのように美術で実践したのですか?
JY:最初の頃は「浸透」という物理的な現象を利用していました。例えば、紙などの素材に墨や絵の具が浸透する現象を絵画制作に応用したんです。
土方:墨が紙に浸透して、偶然性が生まれる。その偶然性は実は必然的、であると?
JY:科学をやっていたものですから、当然そこに必然性があると思います。ただ当時は浸透の偶然性を単純に楽しんでいましたね。
制作中のJY
土方:JYさんは、自然現象や造山摂理は偶然にできるものではなく、そこには必然性があり、理論で解釈することができる、という考えを持っていらっしゃいますよね。この考えが制作に大きく影響しているのでしょうか?
JY:そうです。当初は非常に感性的な態度で制作を始めたのですが、大学時代に研究していたフラクタルの法則の視点から世界を見ると、「空間をどのように考えるべきか」という問題に別の解釈が生まれたんです。自分にとっての新たな解釈を利用して、偶然性に頼るのではなく、必然性を強く認識した上で作品を作ろうと思いました。例えば、マチエールの異なるさまざまな材料をつかって、構造を作るんです。
土方:構造、というと?
JY:自然現象や造山摂理と一緒ですね。岩の材質やどのように水が流れるかによって、最終的にできる山は全く異なる。制作も同じ考えで、描写するのでなく、最初に支持体となる紙の上に構造をある程度作っていく。そこに何年も何年もかけて水を溶かしていくと、最後にどういう形になるか、という感じです。実際に何年も待つのは大変なことですから、別の方法で水の流れを記録したいと思ったんです。
土方:具体的にどのような方法なのですか?
JY:墨を使います。墨は私にとって非常に親しい素材ですから。紙を使って水を流すことによって、墨の濡れた模様や残った跡が変わります。「天地創造」というシリーズでかなりの数を制作しました。
土方:西洋では全ての原点をイデアに求めるイデア論があります。JYさんの考えは、自然現象の原点や自然摂理の原点を構造として捉えるという、東洋的なイデア論のように感じますね。
JY《06-天地創造Ⅵ2009》2009, 183×92cm, mixed media on paper.
JY《Yelling》2022, 75.0 × 94.0m, Roll, Canvas, Japanese ink.
物理を通して得られる方程式は同一だが、全く同じ自然はこの世にない。同じように、物理を利用して描かれたJYの作品も、揺蕩うような流動性を秘めた画面で、観るものに全く異なる印象を与える。物理を駆使した制作を経て、近年は豹をモチーフにしたシリーズで文明への警鐘を鳴らすJY。同作家の今後の活動にご期待ください。
JY × 土方明司
ARTIST

JY는 일본으로 건너와 「浸透」라고 불리는 통계 물리학 박사학위를 취득한 뒤, 그 결과를 자신의 예술 활동에 적용하기 위해 도쿄예술대학의 Koji Kinutani 연구소에서 반복적인 연구를 하며, 새로운 화풍을 만들어낸 뛰어난 재능을 가진 화가다. JY의 업적은 높은 평가를 받았으며, 1992년 사이타마 현대미술관에서 열린 「아시아 현대미술의 여정」 전시에 선정되어 아시아 현대미술의 대표 작가로 미국, 유럽, 중국, 일본 등에서 국제적으로 활동하고 있다. JY는 "Fractals"에 대한 연구를 통해, 현대 수학에서 동양 미술의 메커니즘을 해석하고 사상 최초로 동양 미술의 수학 기초를 닦은 「中国画次元」을 저술하였다.
"물리학을 극단적으로 추구하면 높은 정신성에 도달한다"라는 JY의 말처럼 그가 자신의 생각을 '표범'에게 맡긴 이번 전시회의 작품들은 현대사회와 현대미술에 대한 일종의 반격을 상징한다. 현실과 가상이 교차하는 공간을 자유롭게 여행하며 '표범'의 눈을 통해 인간 본성의 본질을 바라보기 위한 시도이며, 문명이란 무엇이고 야성이란 무엇인가를 묻는다.
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