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坪田昌之の彫刻作品|自然素材と生命のリズムが紡ぐ彫刻の美

2024.07.05
INTERVIEW

坪田昌之

緊張感のある無駄のないフォルムと鮮明な色彩が、角度によって異なる表情を見せる 坪田昌之 の彫刻作品。丁寧に作り込まれた自然素材から成る造形は、新たな生命を宿すように、その存在を空間全体に拡散させる。

1976年生まれ、大阪芸術大学で彫刻を専攻し修士号を取得した坪田昌之。緻密さと自然の調和が共存する彼の作品は、観る者の五感を刺激する。心に深く染み入るような作品は、どのように生み出されるのだろうか。作家へのインタビューを通して、坪田の作品世界に迫る。


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坪田昌之が探求する人間と空間

Masayuki_Tsubota

MASAYUKI TSUBOTA: Unknown Memories, 2024, Whitestone Gallery Seoul


ー作品のコンセプトや制作におけるテーマを教えてください。

坪田:私は一貫して、人間の身体性と空間のつながり方を大きなテーマとしています。

私は主に「木」を素材として扱っていますが、私自身が木と対話するように制作することで、作り手としての私の呼吸や脈拍が作品に吸い込まれるような感覚を大切にしています。このプロセスは、今しかできない作品であるという意識にもつながっています。「一心に彫る」という行為そのものが、表現の一部として物質化され作品は完成します。


アイディアの源泉:日常で得る坪田昌之のインスピレーション

Masayuki_Tsubota

坪田昌之


ー作品のアイディアやインスピレーションはどこから生まれますか?

坪田:アイディアは日常の様々な経験や観察から生まれます。例えば、寺社仏閣には、神聖な空間に至るまでのアプローチに様々な仕掛けがあり、自然な誘いとして機能しています。連続した鳥居が並ぶ場所や開かれた回廊を訪れると、その連続性が時間の流れとつながっていることに気づきます。こうした場所を訪れることで、その場の特性からインスピレーションを得ることもありますね。

本を読んだり、会話であったり、ふとした時にインスピレーションを得ることもあります。次の作品への創作意欲から、構想やドローイングが始まって、だんだんと作品化していく。アイディアがうまく進まない時は、フィールドワークとして様々な場所を歩き回ることもあります。新しい視点やリサーチを経て、新しいシリーズが生まれることもよくあります。


坪田昌之が共感する、円空の祈りと創作

Masayuki_Tsubota

MASAYUKI TSUBOTA: Unknown Memories, 2024, Whitestone Gallery Seoul


ー影響を受けた作家はいますか?

坪田:日本の彫刻家である 円空(1632-1695)には、大きな共感を頂いています。円空は僧侶でありながら、「円空仏」として知られる数多くの仏像を作りました。彼の作品は “祈り” という言葉とともに評価されることも多いのですが、「作らずにはいられなかったのではないか?」という疑問と共に、祈りや魂が込められたかのような表現は、人間の営みの一部だと思っています。

私自身も、呼吸や脈拍が練り込まれたような作品の制作を目指しているので、彼が木を彫る際に感じたであろう自然との対話や人間の存在そのものとの向き合い方は、非常に共感できる部分です。


自然素材の魅力:坪田昌之の彫刻に命を吹き込む素材と色彩

Masayuki_Tsubota

作家アトリエにて


ー立体作品を制作するための素材や道具について教えてください。

坪田:主に木を素材として使用していますが、石や天然素材なども使用しています。制作の初期段階では、チェーンソーやテーブルソーといった大きな機械を使用して素材を切り出します。そして制作が進むにつれて、ノミやカンナといった「手道具」と呼ばれる道具を使用して、より細かい作業を行います。

自分の手で仕上げるという行為は私にとって非常に重要なプロセスで、制作を通して何度も実感していることでもあります。手作業の過程を通じて、作品に込められる想いやエネルギーが増幅される、という感じでしょうか。

Masayuki_Tsubota

坪田昌之


ー坪田さんの彫刻はフォルムだけでなく、色彩も非常に魅力的です。どのような素材を使用しているのですか?

坪田:私がよく使う「朱色」に近い赤は、アクリルメディウムと顔料を使用しています。自らがイメージする精神性を表現できる色に近づけるために数種類を調合しています。

また、天然の顔料を使用することもありますね。メディウムを混ぜて濃淡をつけることはありますが、天然の素材なので自然な色合いを活かすという部分が、アクリル絵の具との大きな違いです。


坪田昌之が語る創作の醍醐味

Masayuki_Tsubota

Group Exhibition: Invisible Dimension, 2024, Whitestone Gallery Beijing


ー作品制作において、最も好きな工程、そして最も挑戦的な工程は何ですか?

坪田:最初に刃物を入れる時が、最も気を遣います。粘土でモデリングするのとは違って、塊を削っていく作業なので、必要以上に削ってしまうと全く別のものに変わってしまう瞬間があるんです。最初に刃物を入れる時は、いつまでたっても変わらない緊張感と楽しみが共存していますね。

ー木材の塊がだんだんと作品になっていく過程で、「作品になっている」と感じる瞬間はありますか?

坪田:掘っていく過程で、「ああここで止めなきゃいけない」と感じる瞬間もあれば、「もうちょっとこうしたいな」と思う時もあります。自分の中である程度の決まり事はありますが、全てを一つの作品に込めるというよりは、同時にたくさんの作品を並べて進めています。この作品はここで止めよう、これはもう少し掘ろうといった「眺める時間」も制作に含まれており、私にとっては非常に重要な時間です。

Masayuki_Tsubota

坪田昌之


坪田は都市の人々の動きや空間の使い方を丹念に観察し、その中で感じるエネルギーや身体のリズムを作品に取り入れている。そして作り手の脈拍や呼吸が注がれた作品は、精緻で無駄のないフォルムの中に自然のぬくもりや質感を宿し、人間と空間の深いつながりを探求し続ける。

ホワイトストーンギャラリーでは、坪田昌之の作品をオンラインでも鑑賞することができます。この機会にぜひ、坪田作品の世界に触れてください。

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