この度、ホワイトストーンギャラリー銀座新館では、加藤美紀とitabamoeの女流作家2人展『Real Women - Through the Passage of Time』を開催致します。
加藤美紀は、着物や日本の伝統文化、歴史的な風景を独自の視点で描く作家である。彼女の作品には、大正・昭和初期のアンティーク着物から着想を得たデザインが施され、女性の自由や美しさが繊細に表現されている。また、日本のアニミズム的な思想を反映し、人や動植物が象徴的な存在として描かれ、あるものは人の姿を借り、またあるものは異なる形へと移ろいながら、生命の尊さや祈りを暗示している。「東京百景」シリーズでは、江戸の浮世絵の手法を現代に継承し、東京の風景を寓話的に描くことで、歴史と未来を繋ぐ物語を紡いでいる。最新の作品群では「時の流れ」をテーマに、風景や歴史の移り変わり、人々の願いが積み重なる情景を表現。彼女の作品は、伝統と現代を融合させることで、日本文化の継承と発展に寄与するとともに、時代とともに変遷してきた女性の生き方を映し出し、その美しさと力強さを讃えている。


Real Women - Through the Passage of Time : 加藤美紀 & itabamoe
Ginza New Gallery
2025.04.04 - 04.26


2025
Acrylic gouache, Canvas
112.0 × 145.5 cm
麒麟、蹄音(つまおと)高く、過去、現在、未来を翔ける。 すべての理には“起点” があり“終点” がある。そして、“終点” は“起点” への新 たな未知を誘う。
刻は今、己が信念をいだき天翔(あまか)けよ。
日本のすべての道の起点・日本橋に鎮座する翼を持つ麒麟。その翼は、ここから全国へ羽 ばたく願いの象徴です。
日本橋は江戸から現代へと人・物・文化が交わる地。街道の一里塚を表す榎や松も柱に装飾され、旅と時間の流れを想起させます。再開発により空が開けつつある今、作家は「す べての終点は新たな起点」と捉え、信念と共に未来を翔ける思いを本作に込めています。
2024
Acrylic gouache, Canvas
91.0 × 72.7 cm
ここは新橋迷口、逢魔が時に異界の扉が開く街。 さあ、共に美酒を酌み交わさん。でも気をつけよ、ソレが人とは限らない。私が誰かはわからない。
泥酔し眠りこける龍が、ポロリと落とした光る玉、どんな願いも叶える至宝、伝説の宝 珠。かつて邪な龍に奪われ、奪い返すことを心に秘めた私の宝。 まぬけな龍が鳴いている。宝珠がないぞと哭いている。さあ、私は何を願いましょうか。
逢魔が時、新橋の路地に現れる“迷口”。酒に酔い眠る龍が落とした宝珠をめぐる幻想譚 は、讃岐国に伝わる「龍宮玉取姫」の物語を、現代の東京に重ねて描かれています。酔い と欲望が渦巻く街・新橋を舞台に、人ならざる者との出会い、正体不明の“私”の視点で 語られる不思議な一夜。
宝珠に宿る力と、それを手にした時に問われる「願い」の本質──人の弱さと強さへの問 いかけが、この作品の核です。伝承と現代が交錯する幻想的な一作には、混沌の時代を生 き抜くための祈りと希望が込められています。
2024
Gouache, Natural mineral pigments, Dyed mud pigment, Watson paper, Wood panel
22.8 × 16.0 cm
彩りを愉しむ『彩華-saika-』シリーズ。
同じ構図でありながら、色や柄、わずかな違いによって変わる印象を通じて、自分の「好 き」を探す楽しみがあります。
江戸時代の浮世絵「大首絵」では、憧れの役者や遊女の顔を大きく描くスタイルが大流行 し、絵の具に雲母の粉を混ぜて光沢を出す「雲母摺(きらずり)」など、観る者を楽しま せる工夫が凝らされています。
『彩華』シリーズもまた、美しい女性の胸像をガッシュで描くことで、表情を間近に鑑賞 することができます。色鮮やかな柄は空間のアクセントとなり、背景に用いた岩絵具が独 特の煌めきと質感を生み出し、実際に目にすることでしか味わえない魅力を放っていま す。
過去から継承されてきた日本の美を、現代へと昇華させる作品群。それが『彩華-saika-』 です。
その中の本作「鬱金香(うこんこう)」は、チューリップを意味する言葉から名付けられています。
2024
Gouache, Natural mineral pigments, Dyed mud pigment, Watson paper, Wood panel
22.8 × 16.0 cm
彩りを愉しむ『彩華-saika-』シリーズ。
同じ構図でありながら、色や柄、わずかな違いによって変わる印象を通じて、自分の「好 き」を探す楽しみがあります。
江戸時代の浮世絵「大首絵」では、憧れの役者や遊女の顔を大きく描くスタイルが大流行 し、絵の具に雲母の粉を混ぜて光沢を出す「雲母摺(きらずり)」など、観る者を楽しま せる工夫が凝らされています。
『彩華』シリーズもまた、美しい女性の胸像をガッシュで描くことで、表情を間近に鑑賞 することができます。色鮮やかな柄は空間のアクセントとなり、背景に用いた岩絵具が独 特の煌めきと質感を生み出し、実際に目にすることでしか味わえない魅力を放っていま す。
過去から継承されてきた日本の美を、現代へと昇華させる作品群。それが『彩華-saika-』 です。
その中での本作《彩華No.6 ブルーローズ》では、ぱっつんショートの女性が、鮮や かな青い薔薇の花をあしらった着物を纏い、優雅でありながらも力強い印象を与えます。
2024
Gouache, Natural mineral pigments, Dyed mud pigment, Watson paper, Wood panel
22.8 × 16.0 cm
彩りを愉しむ『彩華-saika-』シリーズ。
同じ構図でありながら、色や柄、わずかな違いによって変わる印象を通じて、自分の「好 き」を探す楽しみがあります。
江戸時代の浮世絵「大首絵」では、憧れの役者や遊女の顔を大きく描くスタイルが大流行 し、絵の具に雲母の粉を混ぜて光沢を出す「雲母摺(きらずり)」など、観る者を楽しま せる工夫が凝らされています。
『彩華』シリーズもまた、美しい女性の胸像をガッシュで描くことで、表情を間近に鑑賞 することができます。色鮮やかな柄は空間のアクセントとなり、背景に用いた岩絵具が独 特の煌めきと質感を生み出し、実際に目にすることでしか味わえない魅力を放っていま す。
過去から継承されてきた日本の美を、現代へと昇華させる作品群。それが『彩華-saika-』 です。
その中の本作「彩華No.3 百合緑青」は、百合の花を描いた一作です。背景に使用された水 色が「花緑青」に通じる色であることから、この名が付けられました。
2024
Acrylic gouache, Canvas
53.0 × 41.0 cm
黄昏の天に小さな星光が煌めく刻も、黄昏の底に小さな街光が灯る刻も、 変わらず私は待っている。何を待っているのか、もうわからないけれど。
たよりない光を溶かした川面に、花筏(はないかだ)は漂い、私の吐息を海へと運ぶ。 幾千もの光がまたたき、悠久の時が流れても。
江戸時代から、隅田川沿いの桜は咲き誇り、現代に受け継がれています。 本作は、歌川広重の浮世絵『隅田川水神の森真崎』に描かれた桜越しの水神の森から着想 を得て、江戸の名所と現代アートが調和・融合することを目指しました。
水神の森は隅田川神社として今も親しまれ、悠久の時の流れの中、生命の循環を伝えてい ます。消えゆくものの美しさと記憶の中で咲き続ける桜を通し、過去と現在、そして未来 を繋ぐ希望を表現しています。

女性として描く、文化を纏う志:加藤美紀インタビュー
ABOUT

埼玉県出身。女子美術大学卒業。イラストレーターとしてのキャリアを経て、2012年、天明屋尚のプロデュースによる初個展を契機に、本格的に画業に乗りだす。加藤の描く女性像は古典的な着物とは対照的に、大正・昭和初期の「アンティーク着物」からインスパイアされたモダンで斬新な着物をまとう。その着こなし方もまた、艶やかで自由なスタイルであり、視覚的に美しいだけでなく、自立した女性の生きる姿勢・心意気を表現している。和装デザインには時代ごとの風潮や嗜好が反映されることは言うまでもないが、風景や街景にはさりげなく歴史的建造物などが盛り込まれ、観る者は人物像とともに時代の変遷へも思いを馳せることになる。一方で、叙事詩的な日本の伝統文化がその根底にある加藤の作品は、数々の神話や寓話、アニミズムとも深く連鎖し、転生という生命の循環へと繋がっている。「自然や生命の循環」を探求することを主軸にした独特の時空設定においては、時の流れや新古共存のみならず、日常と非日常、現実と異界、などの「境界」が巧妙に融合されており、一見鮮明で具象的な筆致とは相容れぬ深淵な世界観を形成している。
現在、国内外の個展やグループ展をはじめ、老舗着物メーカーとのコラボレーションで新たな着物を作出するなど、デザイナーとしてもその審美眼を発揮している。
itabamoeの作品は、広告業界で培った視覚的表現を現代アートに再構築を試みている。90年代の有機的な若者文化からデジタル時代に移行し、現代社会における「女性像」を新たな視点で描く。イラストレーターとしてコマーシャル的アイコンの一部を担いながら、アートではその枠を超えた表現を目指す。SNSやデジタルメディアで広がる女性像の多様性に着目し、外見にとらわれず、内面から放たれる魅力を強調。ジェンダーや社会的期待に囚われない「新しい美しさ」を表現している。キャンバス上の女性たちは、社会的ステレオタイプに反抗し、自己の内面から放たれる強さと自由を体現。また、視覚言語の明快さとアートにおける曖昧さを織り交ぜ、観る者に多層的な解釈の余地を残す。現代の価値観や美の基準を問い直し、「自分自身の美しさ」を認識するきっかけを提供している。


ABOUT

東京を拠点に活動する現代アーティスト。文化服装学院卒業。アパレル・デザイナーとして勤務後、イラストレーターとして広告業界へ転身。2021年よりアーティストとして活動を開始する。
広告業界で培った女性像への多様なアプローチを血肉化・進化させ、イラストレーションを現代アートの主題として再構築。時代とともに変遷する多元的な「いい女」像をリアルタイムで発信してきた。広告では背景として埋もれていた日常の細部がカンヴァスという俎上に載ることで主体の座を得るプロセスは、周縁性(ジェンダー/人種/第三世界)の再定義という20世紀の社会文化史の潮流のみならず、アーティスト自身の来し方ともリンクする。ポップで視覚言語化されたitabamoeの画風は、誰もが主役になれるソーシャル・メディア時代を素直に反映しているように見せかけながら、個々人に内在する信念や生き方を構成する美質を力強く肯定している。
加藤美紀とitabamoeは、現代女性像の変遷を描きながらも、アプローチが異なる。加藤は日本文化や歴史的背景を取り入れた女性像を表現し、時代と文化に根ざした物語を紡ぐ。一方、itabamoeはデジタル時代の影響を受け、SNSや広告の世界で現れる多様な女性像を探求する。両者の作品は、社会の変化に呼応し、女性の内面を浮き彫りにする点で共通するものがある。ぜひこの機会にそれぞれのRealな女性像の探求とそのパッセージをご高覧くださいませ。


2025.04.04 - 04.26
Ginza New Gallery
Tel: +81 (0)3 3574 6161
Fax: +81 (0)3 3574 9430
Opening Hours: 11:00 - 19:00
Closed: 日曜、月曜