ARTICLES
アートが描きだす崩壊と再生の物語|Aruta Soup: Ruins
2024.04.09
EXHIBITION
"Aruta Soup: Ruins" Whitestone Gallery Hong Kong / H Queen’s
「アート・バーゼル香港」と「アートセントラル」といった重要なアートフェアを筆頭に、様々な文化的プロブラムやイベントが開催される、3月の香港。「香港アートマンス」として多くの人で賑わうこの意義深い時期に、ホワイトストーンギャラリー香港 / H Queen’sではグラフィティ出身のアーティストである Aruta Soup(アルタスープ)の個展を開催する。
"Aruta Soup: Ruins" Whitestone Gallery Hong Kong / H Queen’s
高揚感と畏れが織りなす乱高下
"Aruta Soup: Ruins" Whitestone Gallery Hong Kong / H Queen’s
アートの世界は日々目まぐるしく変化していくが、ギャラリーやミュージアムなどのホワイトキューブ型では、作品はじっくりと鑑賞するものという暗黙の了解が根強く残っている。
Aruta Soup の個展はそんな固定概念を打ち壊すかのように、エレベーターホールから展覧会に足を踏み入れると、ポップでキュートな踊るような鮮やかな色彩の作品群が鑑賞者を出迎える。初めてグラフィティを見た時の感動や、好きなクラブに入った時の高揚感をギャラリースペースでも味わって欲しいという作家の想いが込められた展示室は、敷居の高いアートをより身近な存在として感じさせてくれる。
"Aruta Soup: Ruins" Whitestone Gallery Hong Kong / H Queen’s
しかしさらに奥に進むと、個展は全く違う顔を見せる。白と黒。モノトーンで彩られた部屋は、鮮やかな部屋から一変して、ものものしい様相をたたえる。
色彩に強いこだわりを持つ Aruta Soup が、特に情熱をかけるのが、"ライン=線描" だ。作家にとって自身のアイデンティティとも言えるラインのみで勝負したいという想いから、今展覧会ではモノクローム作品が重要な鍵ともなっている。時代の変化という荒波に晒されながらも逞しく生き抜く、色褪せないアートの魅力が、モノクロームの作品で表現されている。
深遠に横たわる兎はなにを見るか?
"Aruta Soup: Ruins" Whitestone Gallery Hong Kong / H Queen’s
暗い部屋で1人横たわる「ZERO」の彫刻が、不可思議な世界観に拍車をかける。Aruta Soup の作品におけるウサギの「ZERO」は、ノイズ渦巻くこの世界を生き抜くための象徴であり、作家にとって重要な存在である。
絵画以外にも、立体作品やBE@R BRICKとのコラボレーションで登場している「ZERO」だが、今展覧会では造形師であり彫刻家の協力により、緻密な制作のものと、作家が思い描く ZERO を忠実に再現した彫刻を展示する。
制作それ自体が自己の存在証明であるAruta Soupにとって、ストリートとファインアートの領域は非常に曖昧である。だからこそ、キャンバスや彫刻、空間作りと多面的な角度から作品を作り込むことが可能となり、1つの展覧会を通して来廊者に異なる鑑賞体験を促す。
"Aruta Soup: Ruins" Whitestone Gallery Hong Kong / H Queen’s
3月25日に開催されたオープニングレセプションでは、香港アートマンスという時期も手伝って、多くの人で賑わった。来廊者には作家直筆のポストカードのプレゼントや、ガイドツアーも実施。光と闇のコントラストが際立つ展覧会を通して、異世界に迷い込んだような非日常性の魅力に鑑賞者は引き込まれた。
ホワイトストーンギャラリー香港 / H Queen’sでの Aruta Soup 個展『Ruins』は、2024年3月25日から5月11日まで開催。オンラインでも作品をご覧いただけます。
"Aruta Soup: Ruins" Whitestone Gallery Hong Kong / H Queen’s